解決事例 遺留分減殺請求
遺言によりすべての遺産を相続した妹に対し、遺留分減殺請求権を行使して遺産の4分の1を取得
遺言書では相続分なし 相続財産の未開示 訴訟
ご相談者様
60代女性
姉妹間の争い
事件の概要
ご依頼者は2人姉妹の姉ですが、亡母の遺言によりご母堂の所有していた不動産、預貯金、その他一切の財産が妹に遺贈され、自分は何ももらえなかったことに納得がいかず当事務所に相談にいらっしゃいました。
解決への道筋
仮に、ご依頼者のご母堂が遺言書を作成していなかった場合には、ご依頼者の相続分は相続財産の2分の1です。
そして本件のように、他の相続人にすべての遺産を与えるという遺言書が作成されていた場合であっても、ご依頼者は上記相続分の更に2分の1、すなわち相続財産の4分の1を遺留分(いりゅうぶん)として取得できます。
この遺留分の取得の主張が遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)です。
遺留分の有無や「○○分の1」といった割合は機械的に判定できるので、相続人間で争いになることはまずありません。また、遺留分減殺請求の意思表示は任意の方法でなされればよく(通常は内容証明郵便を送ります)、必ずしも裁判を起こす必要はありません。
それでは遺留分減殺請求事件のポイントはどこにあるのかというと、「遺言によりいったん特定の人(法人のこともある)に帰属した相続財産から遺留分を取り戻さなければならない」ところが難しく、弁護士の腕の見せ所なのです。
本件では亡母が所有していた株式について、妹はごく一部しか情報を開示しませんでした。
また、弁護士法に基づく取引履歴の照会に対して、「裁判所からの照会がなければ遺産の詳細を回答できない」という信託銀行もありました。
そこで弁護士は家庭裁判所に調停を申し立て、裁判所の調査嘱託制度を利用して粘り強く相続財産の全容解明に努めました。
さらに、弁護士の調査によると、ご母堂が老人ホームに入所後亡くなるまでの3年間に、ご母堂の銀行口座から多数回にわたって、合計1500万円余の預金が引き出され、老人ホームの経費を差し引くと、この内の少なくとも1000万円が妹によって費消されていました。
被相続人が、特定の相続人に生前贈与をしていた場合にはその額を相続財産に加えないと正しい遺留分の算出ができません。相続人に対する生前贈与は相続財産の前渡しにあたるからです。
妹が費消した1000万円は生前贈与と同視できるものであり、遺留分の算出に当たって相続財産に加算するべきものです。
本件では妹が不動産や株式を処分し相続財産が散逸する前に手続きを進めたことが幸いし、結果的にご依頼者は栃木県の別荘と約2000万円の現金を遺留分として獲得することができました。
弁護士活動のポイント
遺留分は相続人の全てに認められるわけではありません。また、相続順位によって「○○分の1」といった遺留分の割合が異なります。ご自身に遺留分が認められるのか、とか、遺留分の割合について知りたい、という場合には弁護士にご相談ください。
また、遺留分減殺請求権が時効で消滅したり、遺贈を受けた人や会社がその財産を使い切ってしまい他にめぼしい財産がない、など、遺留分を取戻し損なう場合もあり得ますので遺留分減殺請求は速やかになされることをお勧めします。