遺言を残さなければ,故人の財産は,法律に定められたとおりに相続されます。
相続人が複数いれば,遺産は法定相続分に応じて分割され,具体的な分け方は,相続人間の協議により決められます。
ここで,自らの「権利・利益」もしくは「正義」にかなった分割を主張する相続人が出現し,紛争化するケースがよくみられます。そのような将来の紛争の防止・極小化を図る観点からは,遺言には分割方法をより具体的に記しておく必要性が高いです。
もっとも,「故人」も生存中は自らの財産を運用しなければならず,その財産は常に流動する可能性があり,いったん遺言に記載したものが数年後には無くなった,あるいは,別のものに形を変えた,ということもよくあります。
また,財産を譲りたいと考えていた意中の方が,病気療養中で,お亡くなりになってしまう可能性もあります。このようなことから,遺言には,本来の目論見とは別に,次善の策を講じておかなくてはいけない場合もあります。
公証役場に行けば,公証人もある程度のことは相談に応じてくれますので,弁護士に相談・依頼しなくても,公正証書遺言を作成することは可能です。
しかし,将来の状況変化への対策を十分に検討し,真意により忠実でより正確な遺言の作成を望まれるのであれば,弁護士への相談・依頼を経るのが適切と思われます。